遠方の親が退院したら:夫婦で話し合う自宅生活の支え方と備え
親の退院後、遠距離から夫婦でどのように支えるか
親御さんが入院・手術を経て無事に退院されることは喜ばしいことですが、特に遠方にお住まいの場合は、退院後の自宅での生活について、子世代の夫婦にとって新たな課題となることがあります。これまで入院中は病院にお任せできていた医療的ケアや生活サポートが、自宅に戻ることで必要になるためです。
このような状況に直面した際、どのように情報を集め、どのようなサポート体制を築き、そしてそれをパートナーとどのように共有し、協力していくかが重要になります。この課題は、自分たちの仕事や生活があり、さらに自分たちの老後への不安も抱える40代後半の共働き夫婦にとって、決して他人事ではありません。ここでは、親御さんの退院後の自宅生活を、夫婦で協力して支えていくための話し合いのポイントと準備について解説します。
退院前に夫婦で確認・準備すべきこと
親御さんが退院するにあたり、事前に夫婦で情報を共有し、話し合っておくべきことがいくつかあります。
- 親御さんの状態と必要なケアの把握:
- どのような病状で、退院後もどのようなケアが必要なのか、医師や看護師、ケースワーカーから正確な情報を得ることが重要です。身体機能の回復状況、内服薬の管理、リハビリテーションの必要性などを夫婦で共有しましょう。
- この際、どちらか一方が情報を聞くだけでなく、可能であれば夫婦で一緒に説明を聞いたり、聞いた内容を詳細に伝え合ったりすることが望ましいです。
- 自宅環境の確認:
- 親御さんの体の状態に合わせて、自宅の環境が安全であるかを確認します。段差の解消、手すりの設置、滑りにくい床材への対応など、必要な住宅改修や福祉用具のレンタル・購入について検討が必要です。
- 遠方の場合は、帰省の際に夫婦で一緒に確認したり、地域のケアマネジャーや専門職に自宅訪問を依頼したりする方法があります。
- 利用できるサービスの検討:
- 医療保険や介護保険で利用できるサービス(訪問看護、訪問介護、デイサービスなど)について情報収集を行います。地域包括支援センターや担当のケアマネジャー(入院中に病院の相談室を通じて依頼することも可能です)に相談し、親御さんに適したケアプランを検討します。
- 民間の見守りサービスや配食サービスなど、公的サービス以外の選択肢も夫婦で話し合ってみましょう。これらのサービスを利用することで、遠方からでも一定のサポートが可能になります。
- 経済的な側面の共有:
- 住宅改修費用、福祉用具費用、サービスの利用料など、退院後の生活にかかる費用について現実的に把握し、夫婦で共有します。親御さんの貯蓄や年金、利用できる助成制度なども含め、どのように費用を工面するかを話し合います。
- 役割分担の仮定:
- 退院後のサポートにおいて、夫婦それぞれがどのような役割を担えるか、大まかに話し合っておきましょう。例えば、「情報収集は担当する」「親への定期連絡は担当する」「地域のサービス窓口との連携は担当する」「必要に応じて現地への訪問頻度や担当を決める」などです。これはあくまで仮定であり、状況に応じて見直しが必要になります。
退院後の夫婦の協力と話し合いの継続
親御さんが退院されてからの生活が始まると、新たな課題や予期せぬ出来事が起こることもあります。夫婦で協力し、状況に応じて話し合いを続けることが不可欠です。
- 定期的な情報共有:
- 親御さんの体調の変化、サービスの利用状況、親御さん自身の気持ちなどを、夫婦で定期的に共有する時間を持つことが大切です。LINEや電話など、共有しやすい方法を決めましょう。
- 柔軟なサポート体制の見直し:
- 親御さんの状態やニーズは時間とともに変化します。夫婦で共有した情報に基づき、必要であればサービスの利用内容や、夫婦それぞれの役割を見直す話し合いを行います。
- 親御さんやきょうだいとの連携:
- 親御さんの意向を尊重しつつ、必要なサポートについて話し合います。また、きょうだいがいる場合は、夫婦で話し合った内容を伝え、協力を仰ぐことも検討します。きょうだい間の連絡や調整を夫婦のどちらが担当するかを決めておくとスムーズな場合もあります。
- 互いの負担への配慮:
- 遠距離での親のサポートは、精神的・体力的な負担が大きくなることがあります。夫婦それぞれの仕事や自分たちの健康も大切にしながら、互いの負担やストレスに気づき、労り合い、必要であれば休息を取ることも話し合いましょう。
夫婦で建設的に話し合うためのヒント
親御さんの退院後のサポートについて話し合う際は、時に意見の相違や感情的なすれ違いが生じる可能性もあります。建設的に話し合うためのヒントをいくつかご紹介します。
- 冷静に、事実に基づいて話す:
- 感情的にならず、親御さんの具体的な状況や、得られた情報(医師からの説明、サービスの資料など)に基づいて話し合いを進めるよう意識しましょう。
- 「なぜそう考えるか」を伝える:
- 自分の意見や懸念だけでなく、なぜそう考えるのか、その理由や根拠を具体的に伝えます。相手の意見にも耳を傾け、理解しようと努める姿勢が大切です。
- 完璧を目指さない:
- すべての問題を一度に解決しようとせず、まずはできることから、優先順位をつけて取り組む姿勢が重要です。完璧なサポートは難しいことを認め合い、夫婦で協力できる範囲で最善を尽くすことを目標としましょう。
- 外部の専門家を活用する:
- 夫婦だけでは解決策が見つからない場合や、感情的な対立が生じそうな場合は、地域包括支援センターの職員やケアマネジャー、ファイナンシャルプランナーなど、外部の専門家に相談することも有効です。客観的なアドバイスを得ることで、話し合いが進みやすくなります。
まとめ
親御さんの退院後の自宅生活を遠距離から支えることは、夫婦にとって大きな課題となり得ます。しかし、この状況に夫婦で一緒に向き合い、情報を共有し、それぞれの立場や能力を活かして協力することで、親御さんの安心した生活をサポートし、同時に夫婦間の絆を深める機会にもなり得ます。
事前にしっかりと情報収集を行い、夫婦で率直に話し合い、役割分担や利用できるサービスについて検討を進めることが、退院後の混乱を最小限に抑える鍵となります。そして、退院後も親御さんの状況や夫婦それぞれの負担を定期的に共有し、柔軟にサポート体制を見直していく姿勢が大切です。
遠距離からのサポートは容易ではありませんが、夫婦で力を合わせ、時には外部のサポートも活用しながら、この変化の時期を共に乗り越えていくことを願っています。そして、この経験を通じて、ご自身の、そして夫婦の将来の体の変化や老後についても、より具体的に話し合うきっかけとなるかもしれません。