親の終活や看取りについて:夫婦で始める、将来に向けた話し合いのステップ
はじめに:避けがちな「終活」「看取り」の話し合いに、夫婦で向き合う意義
親御様の体の変化に直面する中で、いつか訪れる「終活」や「看取り」について、考え始める方もいらっしゃるでしょう。しかし、このテーマはデリケートであり、どのように切り出せば良いか、パートナーと共有すべきか、具体的なイメージが湧かず、つい先延ばしにしてしまいがちです。
特に、親御様が遠方にいらっしゃる場合や、親御様のパートナーの方にも負担がかかっている状況では、情報が十分に共有されず、いざという時に慌ててしまうことも少なくありません。また、親御様の終活は、いずれ私たち自身の老後や終活を考えるきっかけともなります。
この記事では、親御様の終活や看取りについて、ご夫婦でどのように情報共有し、将来に向けた話し合いを始めていくか、そのステップとヒントをご紹介します。パートナーと共に、少しずつでも前に進むための道筋を探る一助となれば幸いです。
なぜ夫婦で話し合う必要があるのか
親御様の終活や看取りに関する話し合いは、なぜご夫婦で共有し、協力して進めることが重要なのでしょうか。
- 情報共有と認識の統一: 親御様の意向、財産の状況、医療や介護に対する考え方など、夫婦それぞれが知っている情報や認識が異なることがあります。情報を共有し、共通理解を持つことで、いざという時の判断や手続きがスムーズになります。
- 精神的な支え合い: 親御様の終末期に関わることは、多くの感情を伴います。不安や悲しみ、後悔など、様々な気持ちを抱える中で、パートナーが精神的な支えとなります。お互いの気持ちを共有し、労い合うことが大切です。
- 役割分担と協力: 遠方の場合、手続きや病院への付き添いなど、物理的な負担も伴います。ご夫婦で協力し、役割を分担することで、一人にかかる負担を軽減できます。
- ご自身の将来への準備: 親御様の終活や看取りを通して、ご自身たちの老後や終活について考えるきっかけとなります。早い段階から夫婦で話し合うことで、自分たちの将来に向けた具体的な準備を進めることができます。
夫婦で始める話し合いのステップ
終活や看取りに関する話し合いは、一度で全てを解決しようとするのではなく、段階的に進めることが現実的です。
ステップ1:まずは夫婦間で現状認識を共有する
- 親御様の現在の健康状態、既往歴などを改めて共有します。
- 親御様が現在受けている医療や介護サービスについて情報を整理します。
- 親御様とのこれまでの会話の中で、将来について触れたことがあるか思い出してみます。
- 夫婦それぞれが、親御様の終活や看取りについて、現在どのように考えているか、どんな不安があるかを率直に話してみます。
ステップ2:親御様の意向に関する情報を集める
この段階では、直接的に「終活」という言葉を使わずとも、親御様の「もしも」に対する考え方を知ることから始めます。
- 日常的な会話の中で: 体調について、将来について、どのような生活を送りたいかなど、日頃の会話の中で自然な形で意向を聞き出す工夫をします。「どんなことに興味がある?」「最近気になることは?」など、広い話題から入ることも有効です。
- ツールを活用する: エンディングノートや、人生の最期にどのような医療を受けたいかを示す意思表示(リビング・ウィルなど)について、夫婦で情報を集め、親御様に紹介することも考えられます。「こういうものがあるらしいよ」と話題にしてみるのも良いでしょう。
- 親御様のパートナーの方との連携: 親御様のパートナーの方がいらっしゃる場合、その方のお考えや、親御様の意向について知っている情報を共有していただくことが非常に重要です。夫婦で相談し、適切な方法で連携を図ります。
ステップ3:夫婦で話し合い、方針や役割分担を検討する
集めた情報や、親御様との会話を通じて感じ取ったことを踏まえ、ご夫婦で具体的な話し合いを進めます。
- 話し合うテーマの整理: 医療(延命治療の希望など)、介護(どこで、誰に看てもらいたいか)、財産(相続、生前贈与など)、葬儀(形式、場所)、お墓(既存、新規)、住まい(自宅、施設)など、話し合うべきテーマは多岐にわたります。優先順位をつけ、一つずつ整理します。
- 自分たちの希望や考え: 親御様の意向を尊重しつつも、ご夫婦として、どのようなサポートが可能か、どのような選択肢があるかを話し合います。遠方の場合の訪問頻度や、金銭的なサポートの可能性なども含めて具体的に検討します。
- 役割分担: 誰がどのような情報収集を担当するか、誰が親御様や関係者とコミュニケーションを取るか、手続きの分担などを決めます。お互いの得意不得意や、仕事との両立などを考慮して、無理のない範囲で分担します。
ステップ4:定期的に見直し、必要に応じて専門家に相談する
一度話し合ったからといって終わりではありません。親御様の体調や状況は変化しますし、ご夫婦自身の状況も変わります。
- 定期的な話し合い: 半年に一度、一年に一度など、定期的に夫婦で話し合いの機会を持ち、情報の更新や方針の見直しを行います。
- 専門家の活用: 医療・介護に関する相談はケアマネジャーや地域包括支援センター、法律や財産に関する相談は弁護士や行政書士、税理士など、必要に応じて専門家のサポートを受けることも有効です。夫婦で連携して相談に臨むことで、より正確な情報を得られます。
終わりに:完璧を目指さず、夫婦で寄り添いながら
親御様の終活や看取りについて、すべてを完璧に準備することは難しいかもしれません。また、親御様の意向と自分たちの考えが一致しないこともあるでしょう。大切なのは、「もしも」の時に備え、ご夫婦で情報を共有し、お互いの気持ちに寄り添いながら、共に考え、行動していくプロセスそのものです。
この話し合いは、ご夫婦自身の将来について向き合う機会でもあります。お互いの健康や老後への不安を共有し、共に乗り越えていくための第一歩として、この機会を捉えてみてはいかがでしょうか。時間はかかるかもしれませんが、パートナーと共に、一歩ずつ進んでいくことが、将来への大きな安心につながるはずです。