親の体の変化で外出が減ったら:夫婦で気づき、共に考えるサポートのヒント
親の体の変化で外出が減ったら:夫婦で気づき、共に考えるサポートのヒント
年齢を重ねるにつれて、親の体に様々な変化が現れるのは自然なことです。こうした変化は、本人の生活スタイルや日々の活動に影響を与える可能性があります。特に、以前より外出する機会が減り、自宅で過ごす時間が増えたように感じられる場合、それは単なる億劫さだけでなく、体の変化が背景にあるかもしれません。
40代後半の共働き世代にとって、遠方に暮らす親のこうした変化に気づくことは容易ではありません。しかし、親の外出機会の減少は、体力や認知機能の低下、社会からの孤立といった、さらなる心身の衰えに繋がりうる重要なサインである場合があります。親が健康に、そして活動的に日々を送ることは、親自身の幸せだけでなく、親を見守る家族、特に親のパートナーの負担軽減にも繋がり、私たち夫婦自身の将来の不安軽減にも繋がります。
この記事では、親の体の変化による外出減少に夫婦でどのように気づき、その影響を理解し、そして無理のない範囲で共にサポートを考えるためのヒントをご紹介します。
なぜ、親は外出が減るのでしょうか? 体の変化との関係
親が以前より外出をしなくなる背景には、様々な体の変化が考えられます。例えば、
- 筋力や関節の衰え: 歩くのが辛くなる、段差が怖いと感じるなど、移動そのものが負担になる。
- 視力・聴力の低下: 外出時の危険察知が難しくなる、人との会話が億劫になる。
- 慢性的な痛みや不調: 持病が悪化したり、新たな不調が現れたりして、外出する意欲が削がれる。
- 意欲の低下: 体力や気力の衰えが、活動的な気分になりにくくする。
- 排泄に関する不安: 外出先でのトイレへの不安から、長時間の外出を控えるようになる。
これらの体の変化が複合的に影響し、外出が億劫になり、結果として自宅に閉じこもりがちになることがあります。
外出減少がもたらす影響
外出する機会が減り、自宅で過ごす時間が増えると、親の心身に様々な影響が出る可能性があります。
- 身体機能の低下: 運動量が減ることで、さらに筋力やバランス感覚が衰え、転倒リスクが高まるなど、悪循環に陥る可能性があります。
- 認知機能の低下: 外部からの刺激が減り、人との交流が少なくなると、認知機能の維持にも影響が出ることがあります。
- 精神面への影響: 社会との繋がりが薄れることで、孤立感や孤独を感じやすくなり、気分が沈んだり、うつ傾向になったりするリスクも高まります。
また、親の外出機会が減ると、親のパートナー(もし健在であれば)の見守りや世話の負担が増加する可能性も否定できません。こうした状況は、私たち夫婦にとって将来の介護負担への不安を増幅させる要因にもなりえます。
夫婦で気づくためのサインと情報共有
離れて暮らす親の外出減少に気づくためには、夫婦で意識的に親と関わり、情報共有をすることが大切です。
- 電話やオンラインでの会話:
- 「最近、どこか行った?」「何か変わったことあった?」など、さりげなく外出の頻度や内容について尋ねてみる。
- 声のトーンや会話の様子から、以前と比べて活気があるか、疲れている様子はないかを感じ取る。
- 帰省した際の観察:
- 家の周りの様子(庭の手入れ、郵便物の溜まり具合など)や、家の中の様子から、活動量が減っていないか感じ取る。
- 親の歩き方、身だしなみ、部屋の片付け具合など、体の変化や意欲のサインを探る。
- 親のパートナーがいる場合は、パートナーから最近の親の様子について丁寧に聞き取りをする。
- 親のパートナーからの情報: 親のパートナーが、日々の様子から感じている変化を話してくれる場合、その情報を真摯に受け止め、夫婦で共有します。
夫婦どちらか一方が気づいたサインも、二人で共有することでより客観的に状況を把握できます。「最近お母さん、電話で疲れているみたいだったね」「この前行った時、お父さんの歩き方が少し不安定になった気がしたんだ」など、小さな気づきも話し合ってみましょう。情報共有のための定期的な時間を持つことも有効です。
夫婦で話し合うサポートの方向性
親の外出が減っていることに気づいたら、次に夫婦で話し合いたいのは、どのようなサポートが可能かという方向性です。この話し合いでは、以下の点を考慮に入れることが大切です。
- 親本人の意向: 何よりも、親自身がどうしたいと思っているのかを尊重することが重要です。無理強いは禁物です。「元気なうちは大丈夫」「誰かの世話にはなりたくない」と考えているかもしれません。すぐに受け入れられなくても、根気強く、親の気持ちに寄り添いながら話し合いを重ねることが必要です。
- 体の具体的な状況: なぜ外出が億劫になっているのか、その原因となっている体の変化は何か、可能な範囲で把握します。医療機関を受診している場合は、診断や医師のアドバイスも重要な情報源となります。
- 私たち夫婦の状況: 遠距離なのか、近距離なのか。仕事や子育て、自分たちの体調などを考慮し、どの程度物理的・時間的なサポートができるのか、現実的に検討します。
- 親のパートナーの状況: 親のパートナーが健在であれば、その方の負担や意向も十分に配慮します。パートナーが主体的にサポートしている場合、そのサポートをどう支えるか、という視点も大切です。
話し合いが難しい場合、夫婦だけで抱え込まず、親の体の変化や介護に関する情報収集を一緒に行ったり、地域の相談窓口について調べてみたりすることから始めるのも良いでしょう。共通の情報を得ることで、建設的な話し合いに進みやすくなることがあります。
具体的なサポートのヒント:夫婦でできること
夫婦で話し合った結果、親の外出機会を増やすためのサポートを始めることになった場合、無理のない範囲で以下のような方法を検討できます。
無理なくできることから始める
- 声かけ: 定期的に電話やオンラインで話し、「今日の天気良いから、ちょっと散歩したら気持ちいいかもね」「前に行きたがってたお店、今度行ってみようか」など、さりげなく外出を促す言葉をかける。
- 自宅での活動提案: 家でできる簡単な体操や趣味(読書、手芸、音楽など)を提案し、意欲を引き出す。
- 小さな目標設定: 「まずは家の周りを5分散歩してみる」「週に一度、近所のスーパーまで買い物に行ってみる」など、達成可能な小さな目標を一緒に考える。
社会との繋がりを保つサポート
- 地域の情報提供: 親の住む地域の自治体広報誌やインターネットで、高齢者向けのサロン、趣味の教室、体操教室、配食サービスなどの情報を探し、親に伝えてみる。夫婦で一緒に情報収集するのも良いでしょう。
- デイサービス等の検討: 必要に応じて、デイサービスやデイケアなどの利用を検討します。これらのサービスは、送迎付きで外出機会を提供し、他者との交流やリハビリの機会となります。夫婦でサービスの内容を調べ、親に丁寧に説明し、体験利用を促すなど、導入に向けて協力して進めます。
安全な外出をサポート
- 通院や買い物への付き添い: 夫婦どちらか、あるいはきょうだいと協力して、通院や普段の買い物への付き添いを分担できないか検討する。事前に、待ち合わせ場所や時間、持ち物などをしっかり共有しておきます。
- 公共交通機関や送迎サービスの利用: 親自身での移動が難しい場合、地域の福祉タクシーや、病院・店舗の送迎サービス、ボランティアによる送迎サービスなどを調べて利用を検討する。
- 自宅環境の整備: 外出前の準備がスムーズにできるよう、玄関に手すりを取り付けたり、靴の脱ぎ履きがしやすいようにしたりするなど、自宅の環境を整えることも外出を促す一助となります。
専門家への相談も視野に
親の体の変化や外出減少について、どのようにサポートすれば良いか悩む場合は、夫婦で情報を集め、専門家へ相談することを検討しましょう。親が住む地域の地域包括支援センターや、担当のケアマネジャー(もし介護認定を受けていれば)は、親の状況や地域のサービスに詳しく、具体的なアドバイスや支援をしてくれます。夫婦で相談内容を整理し、一緒に相談に行くことも有効です。
まとめ:夫婦で寄り添い、共に考える
親の体の変化に伴う外出頻度の減少は、見逃されがちなサインですが、親のその後の健康や生活の質に大きく関わってきます。40代後半の共働き夫婦にとって、物理的な距離や時間の制約がある中で、この問題に気づき、適切に対応することは容易ではありません。
だからこそ、夫婦でこの課題に一緒に向き合うことが重要です。お互いの気づきを共有し、親の状況、そして自分たちの状況を踏まえて、率直に話し合い、無理のない範囲で具体的なサポート方法を共に考えることが、親の健やかな生活を支え、私たち自身の将来の不安を軽減することに繋がります。
すぐに完璧な解決策が見つからなくても、夫婦で「親の体の変化を気にかけ、必要に応じてサポートを考えていこう」という共通認識を持つだけでも、大きな一歩となります。焦らず、お互いの気持ちに寄り添いながら、夫婦二人三脚でこの変化と向き合っていくことが大切です。